NEW WORLD

読んだ本の記録

kaze no tanbun

西崎憲さんプロデュースの短文アンソロジー

特別ではない一日と移動図書館の子供たち

まずはこの豪華執筆陣を見てくれ

 

 

最高では???

1冊目の特別ではない一日は大好きな岸本佐知子さんに皆川博子さんに山尾悠子さん!2冊目は伴名練さん!とわたしな好きな作家さんのお話が一度に読める……最高のアンソロジーです!!!!!!!!


短文アンソロジーということで小説だけではなく日記やエッセイもありどれもちょっとへんてこで良い

掌編ではなく短文なのがポイントというかこれは完全にイメージで語ってるけど掌編が手のひらにぎゅっと握り込める物語ならこの2冊の中の短文は手のひらに握ろうとしてもそこから溢れてしまうような広がりのある物語って感じ

手のひらの隙間から砂のようにこぼれていくものもあれば水のように流れていくものやもっと粘度のあるスライムのようにぬるっとこぼれるもの、手の中に握ろうとしても空気の中に霧散していくものもある

どれもがほんの短い文章でありながらどこまでも広がっていくイメージなのだ

 

 

特別ではない一日では岸本佐知子さんの年金生活がへんてこで少し不思議なSFで好き

皆川博子さんの今日の豆は明日の肉はコロナ禍以前に書かれた物語だけど足の先から体が豆化していく感染症の話で今の状況を彷彿させたりする

どっちも近未来ディストピアというか終末世界っぽい感じが良い

滝口悠生さんの半ドンでパンも好き

タイトルのとおり半ドンでパンを食べる話

わたしが小学生の頃はまだ半ドンの土曜日があって、特にパンを食べた記憶はないけれどあの頃はなんとも思わなかった土曜日のあの時間がなんと特別なものだったか噛みしめながら読んだ

読んでるとこれって特別な一日なんじゃ?と思ったりもするのですが(そもそも物語として語られる一日が特別ではないわけがない、みたいな)特別かどうかは状況や感じ方によって変わるものだなぁ、とも思う

終末世界の一日もノスタルジックな幼い思い出の一日も旅先で過ごす一日も全て特別ではない特別な一日

 

 

 

二巻、移動図書館の子供たちはタイトル通り本、図書館に関わる話が多い

大好きな伴名練さんの墓師たち、最高でした……!

ある地域では墓は椅子であり、また別の地域で墓は生きている

様々な墓、様々な弔いの形は民俗学っぽいおもしろさがある

墓とは愛の形なのか、それとも遺された人間を縛り付ける呪いなのか……

その魂が安らかであるようにという祈りも今世の悔いや来世の願いも愛でなければこんなにも美しいいくつもの墓はなかったでしょう

怪奇幻想味の強い短篇で好みど真ん中ストライクでしたありがとうございます……

 

柳原孝敦さんの高倉の車庫/砂の図書館もすごく良かった

幼い頃に読んだ本と本を届けるセールスマンの思い出

大人っぽい物語を初めて読むときの高揚感、秘密の書庫の背徳感、本にまつわるときめきとうっすらと滲む不穏さ

薄いカーテン一枚で隔てられた向こう側を覗いてしまったら二度と戻れないような恐ろしさがあった

本当はカーテンの向こう側に何があるかわかっているのに……

(おまけの貸し出しカードのしおりも柳原孝敦さんでした

このカードかわいくて好き)

 

斎藤真理子さんのあの本のどこかに、大事なことが書いてあったはずも本好きあるあるって感じでおもしろい

好きです

 

そしてこのkaze no tanbunシリーズで出会い特別ではない一日、移動図書館の子供たち、どちらでも最高だったのが我妻俊樹さん!!!!

物凄くツボです……!

特別ではない一日に収録されているモーニング・モーニングセットは全くどんな話か説明できない(説明できる人いる??)

正直に言って意味がわからないんだけど不思議と心地よい破茶滅茶な言葉の奔流に飲み込まれあれよという間に辿り着くラストには長い旅を終えたような寂しさがある

ほんの数ページの物語の中に誕生と喪失を感じる

こんな感覚的なことしか言えないけど(だって説明できないし)この意味のわからなさは読んでくれとしか言えない

どうしたらこんな言葉が書けるんだ???

 

移動図書館の子供たち収録のダダダは人が本に変わってしまう世界の終末SF

初っ端から運転細胞とか店員細胞とかいう言葉にやられてしまう

なんかカートゥーンっぽいアニメで再生された

しかしどうしたらこんな言葉が書けるんだ???

 

 

kaze no tanbunシリーズは次の3巻で最後らしいけど(悲しい)我妻俊樹さん次も書いていてほしいな、もっと読みたい……

というか本当にどなたの作品も素晴らしくて特別なプティフールが詰まってるみたいなアンソロジー

一気に読むのも夢のようだけどもったいない気もするしひとつひとつの短文の魅力を存分に味わうならちょっとずつ読むのが素敵だと思う

お気に入りの紅茶や珈琲なんかと一緒に

お菓子と違ってアンソロジーの物語はなくならないしこの短文たちは読めば読むほど味が出るから素晴らしい

この先も何度も読み返すであろうアンソロジー

アンソロ好きとして出会えて幸せな一冊ですありがとうございます

西崎憲さんの編み出す世界観が好きだなぁ